今日の映画

前期旧石器捏造事件を君は知っているか?

2000年11月5日に列島に衝撃波が駆け抜けた。
震源地は宮城県。

20年以上も前に日本に前期旧石器があると、考古学会を賑わせていた。
今まで日本の旧石器時代は後期旧石器時代までで、3万年前からせいぜい4万年前だろうと考えられていた。

それは南関東のローム層の最下層から出土する石器からして、3、4万年前が妥当な年代だった。

1976年から調査が行われた座散乱木(ザザラギ)で4万年を遡る石器が出土し、宮城県の研究者はさらなる古い遺跡を求めて調査を行った。馬場壇では10万年を遡る石器が出土することで、前期旧石器問題は「結着」したと前期旧石器信奉者たちは高らかに勝利宣言を行った。

多くの研究者達は、前期旧石器研究に我もと群がった。
一方では前期旧石器否定論者達は、研究者としての生命を奪われ、学会の片隅に身を置くことになる。

多くの前期旧石器研究者が生まれ、東北の成果を取り入れ、難解、晦渋な論文を我先に発表し、前期旧石器にお墨付きを与えた。学生も理解もできないくせに、卒論、修論に前期旧石器をテーマとした。

年が経つごとに、年代はますます古く遡り、果ては北京原人の70万年前まで、エスカレートしていった。

フィーバー振りは凄まじく、毎回毎回、調査を行えば前期旧石器を発見する人物は「神の手」とまで呼ばれた。

マスコミも話題を逃すまいと、ニュースを流し続け、我が町は原人の町だと町おこしに利用し、土産物屋まで現れる狂乱振り。

長い年月、前期旧石器は信奉されていたが、余りにも掘るごとに時代がエスカレート気味に遡り、発見するのはいつも決まりきって「神の手」とそのグループに限られているところから、徐々に疑う研究者が一人二人と現れはじめる。

前期旧石器が捏造ではないかとの情報をつかんだ毎日新聞札幌支局のメンバーが、解明に乗り出す。

何度か捏造の現場をつかむものの、失敗を繰り返し、とうとう「神の手」が石器を埋めている現場の動かぬ証拠をビデオカメラにとらえる。

捏造のやり口は、人のいない早朝を狙い、移植コテで掘って埋め、それを自分が掘り出すという極めて簡単な手口だった。

当初、犯人は魔がさしたと1ケ所の捏造は認めたものの、関わった全ての前期旧石器の遺跡は捏造だと判明する。
その捏造した遺跡の数は27ケ所であった。

そして、「神の手」が埋めた石器は彼があちらこちらで拾ってきた石器だった。
それも縄文時代の石器であった。

20年間捏造はどうして見破れなかったのか。
そこに学会の閉鎖性と未熟な研究、都合のよい解釈と理解できない事象をさも解明したかのような、晦渋な論文が捏造を下支えした。

前期旧石器の発見から捏造解明に至る経緯を知るものは、今40歳から70歳の世代の人たちである。

20年が経ち、今、捏造を題材にしてフィクション「ニーチェの石器」を書いてます。
今年の暮れまでにはなんとか仕上げたいです。
考古学徒達の青春群像と、ミステリー仕立て仕上がりになると思います。